この場所は、一日に何度となく立ち寄る私のパワースポットです。家事の途中でふらりと立ち寄り、大好きな物語の大好きな場所を拾い読みして、またひらりと立ち去り、家事に戻ります。
緊急事態宣言が出されて、日々の暮らしが制限されるようになりました。けれど何となくですが、ウィルスとの闘いは、まだまだこれからのような気がしてなりません。そして先が見えない毎日に、やっぱり気持ちは下がり気味に・・・・・・。
そんな今、この場所から折に触れて引っ張り出しては拾い読みしている本があります。それは、ローラ・インガルス・ワイルダー作「大きな森の小さな家」シリーズです。
この物語を初めて知ったのは、NHKのドラマでした。私がまだ小さな頃に再放送していた古き良きアメリカのドラマ。ローラのキャラコのドレスや、家族で乗り合う幌馬車、どこまでも続く大草原にワクワクしながら、画面にくぎ付けだったことを鮮明に覚えています。
少し大きくなり、小説があると知って手に取ったシリーズは、まさに驚きの連続でした。それまで、小説とは、どこか不思議の国に冒険したり、魔女や妖精が次々と出てきては、ドキドキ・ハラハラするものだと思っていたのです。ところがこの本に書かれていたことは、インガルス一家の暮らしの記録に過ぎません。しかも、それがこんなに面白いなんて!
パンを焼いて、牛の乳を搾り、洗濯をして、家を整える。生活に必要なものはほとんどが手作りで、大きな壺のようなものに木の棒を差し込み、バターを作る挿絵を食い入るように見つめたり、飼っていた豚を泣く泣く殺し、その肉を余すことなく保存食にする様子を詳細に記憶したり。かえでの蜜を雪の上で固まらせて、キャンディのようにほおばるシーンに生唾をのみ、クリスマスにもらうお人形に、私も思いを馳せました。ローラの日常こそが私の求めるものだ!と思い込み、近くにかえでの木を探しに出かけましたが、もちろんあるはずがありません。ほんの100年ほど前の暮らしが、あまりにも遠く、憧れ故に、今でも光り輝いているのかもしれません。
そして、この物語は、実は予想もしない困難の連続でもあるのです。
大自然という、どうあがいても勝てない相手と共存し、たくましく生きていく物語。
厳しい冬、イナゴの大群、ふりしきる雨、そこに住まう動物たち。ある冬に至っては、ジャガイモばかりを食べる羽目になったインガルス一家。その生活の凄まじさに、「お願い!早く春よ来て!」と願いながら読み進めましたっけ。
そして今、無意識のうちにこの物語に手を伸ばすのは、必然のような気がしてなりません。見えないものに立ち向かおうとする今だからこそ、この物語の強さや普遍性に勇気をもらっている気がしてなりません。
本はただの娯楽。確かにそうかもしれないけれど、本当に良い本からは、必ず生きるチカラを貰えます。特に、昔から読み継がれている良質な児童文学は、必ず心の支えになる。心を豊かに耕し、いつか実のなる種を植えてくれるこれらの物語を、もう一度読んでみることをおすすめします。
物語のチカラを信じています。