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ー台所の読書ー

一日の大半を過ごす場所、それは台所です。

朝起きてから夜寝るまで、何度エプロンをかけて台所に立つのでしょう。家にいても、おなかはすきますからね。

 

今は、子どもたちとずっと一緒なので、まとまった読書時間をとることができず、小さな隙間時間をパッチワークのようにつなぎ合わせた読書時間を持っています。

 

私は、小さな頃から一冊集中型ではなく、たくさんの本を同時進行で読んでいく多冊分散型なのですが、それは今も変わらず、各部屋に「今読んでいる本」を置いていて、その部屋に用事をしにいくついでに、ちょこっとつまみ食いならぬ「つまみ読み」をするのが、日々の楽しみになっています。

 

今、一番過ごすことが多い台所はこの本。

続・私の部屋のポプリ

熊井明子 著

 

熊井明子さんは、日本におけるポプリの第一人者となる方。熊井明子さんは、赤毛のアンが大好きで、物語の中にでてくる「雑香」という言葉が引っ掛かり、ご自身で洋書などを取り寄せて学ばれたり、海外との通信販売がまだ常識ではない頃に個人輸入をされたりと、ポプリを熱心に研究し、それを日本に紹介されました。香りはもちろんですが、赤毛のアンやシェイクスピア、文学などに関するエッセイも多く、私も幼い頃から、この方の紡ぐ香り高い日本語のエッセイに、ずっと惹かれてきた一人です。

 

雑誌に載っていたポプリづくりを、家の庭に咲いている草花で挑戦し、カビを量産したことは、今でも良い思い出です。母に捨てられた時は悲しかったなぁ・・・・・・。

 

この本は、春のポプリ・夏のポプリ・秋のポプリ・冬のポプリと分かれているうえに、一ページにまとめられた小さなエッセイで編まれています。それが台所の読書にちょうど良い本となり、定位置は台所脇のチェストの上になりました。

 

もう、何度も読み返している本は、その日開いたところから読むというのも、楽しい読書スタイル。

 

それが思いがけず、その日の指針となる文章に出会ったり、ふさぎ込んでいた気持ちが上向きになる言葉に出会えたりと、嬉しい偶然に出会うこともしばしば。

 

それに、古いエッセイは、インスタントではない重みがあります。

メールもスマホもない時代。

何か一つ調べるにも、時間もお金もかかっただろうと思うのです。

 

ここまで、時代の流れが速いと、3年前の事が古く感じてしまうことが多々あります。

けれども、熊井明子さんの文章には、その古さが全くありません。

私たちが知らない時代だから、新しく新鮮に感じるというのともまた違います。

 

変化も大事。

変わっていくことを否定するわけではありません。むしろ、変化が人を強くすることだってたくさんあります。

けれども、根幹に流れる普遍性も、また大切なのではないかなぁと思う、今日この頃です。