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ー黒いワンピースと「かご」さえあればー

皆さんにとって、「おしゃれ」ってどんなものですか?

少し、苦手なもの?
とっても、楽しいもの?
ちょっと、めんどうなもの?
できれば、したくないもの?
それがなければ、生きていけないもの?

「おしゃれ」って、言葉はすっごく面白い言葉だなぁと思いませんか?

だって、「おしゃれ」って言葉だけでは、それぞれの人の中に浮かんでくる人物像が、全く定まらないのですもの!

高級品で身を固めることが「おしゃれ!」な人もいれば、1着のTシャツをとことん着回すことが「おしゃれ!」な人がいる。

たくさんのドレスがクローゼットに並ぶ人が「おしゃれ!」だと思う人がいれば、デニムしか履かない!という人が「おしゃれ!」だと思う人もいる。

私自身は、トランクひとつで生きて行きたい!と思いながら、物にまみれた人生を送っているのが現実です。


物だって、厳選されたものだけをたくさんもっているのなら、素敵なんでしょうけど、実際には、銀行でもらったキャラクターのメモ帳。保険やさんにもらったタオル。そんなものが雑多にまぎれているのが、現実です。

 

トランク一つの生活に憧れるのは、たぶん魔女のおかげ。

 

魔女の宅急便のキキのセリフを、ちょっと拝借。

 

「いいえ、あたしたち、あんまりものはいりませんから。洋服もこのとおりだし、食べ物もすこしでいいし・・・・・・なければないようにやっていくつもりですから」

 

この言葉を胸に刻んで以来、質素に、簡素に生きるという言葉を思い浮かべる時、いつだって魔女が現れてくれます。


そして、この言葉を胸に刻んで以来、ずっと黒いワンピースだけで生きていきたいと、何十年も思い続けてきたのです。

 

ところが、実際の私は、世俗にまみれて、どうにも魔女になれる気配がありません。

青いシャツだって気になるし、赤いワンピースは素敵だし、緑のカーディガンも可愛いし・・・・・・。

そもそも、黒いワンピースだけを毎日着ていたら、周りの人に変な人だって思われちゃう。

 

そんな、こんなで、憧れは憧れのまま、ずぅぅぅっと胸の奥にしまっていたのです。

 

けれども、この春はなんと「外出自粛」。


だから、他人の目を気にする必要がありません。

これは、ずっとずっと憧れていた、「黒いワンピース」だけで過ごす、魔女のような生活ができる!

 

そうして、約3か月を黒いワンピースと共に暮らしてみたのです。


それは、とっても清々しく、憧れの生活を手にしたよろこびに溢れた時間となりました。

 

どうして私は、あんなに人の目を気にしていたのだろう?

どうして私は、人から「おしゃれ」だと思われたかったのだろう?

 

3か月間、黒いワンピースと共に暮らした私がもらったギフトは、それは大きなものでした。

 

考えてみれば、おしゃれなんて、人のためにすることじゃありませんものね。

 

もちろん大人ですから、TPOやあまりにチグハグは困りますが、好きなものを着ていいんだ!と、今更ながら気づいてしまったのです。

 

 黒いワンピースとかごさえあれば、私は幸せになれるのに、どうしてあんなにたくさんの服が必要だったのだろう?


なんて、思ってしまったのです。


もちろん、これからも服は買うでしょう。でも、私のクローゼットの中には、きっぱりと一本の背骨が埋め込まれました。

 

 しゃん。と、自分らしくいられる、背骨です。


きっと、これからは、魔女みたいな理想のワンピースを探すことが、楽しみのひとつとなるのでしょうね。


黒いワンピースと、何でもポンポン入る、かごさえあれば。