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ハッとさせられる物語

ムーミン達には、全くハッとさせられる。

 

あの、可愛らしく得体のしれない「いきもの」たちが織り成す物語は、時にぐぃっと、私たちの中に押し入ってきます。

 

◆なにをしたらいいか、わからなかったのです。なにしろ、しなければいけないことは、自分かほかのものかが、もうすっかりやってしまったように思えましたもの。

 

 

◆マッチを手にする小さい生きものには、とても大きな責任がかかっているんだよ

 

この二つの言葉たちは、【ムーミンパパ海へ行くいく】のはじまり20行に書かれているもの。

 

はじまった瞬間から、この真意を突く鮮やかさに、いつだって「やられたぁ!」とのたうち回らずにはいられない。それがムーミン達の物語なのです。

 

さらに、こんな風に続きます。

 

◆みんなはいつでもなにかやっていました。しずかに休みなく、むちゅうになって、自分たちの世界を形づくっている一つ一つの小さなことがらに、とりくんでいたのです。その世界は、まったく自分たちだけでつくりあげているもので、外からはなにもはいりこむ余地はありません。

 

そうそう。そんな風に見えるものですよね。他人の世界は・・・・・・。

 

ムーミンを初めて読んだときは、それはもう衝撃だったことを覚えています。

【童話】の風貌をしながら、読んだ瞬間に「これはもう童話じゃない!哲学書だ!」と思いましたもの。

 

「楽しいムーミン一家」というアニメが好きで、幼い頃ずっと見ていたのですが、あの可愛らしく、オシャレ感すら漂う見た目からは想像できない深い物語性と、隠し持つ暗さに小学校高学年だった私は衝撃を受けました。

 

ムーミンシリーズが心のバイブルになる方は、きっとこのギャップを受け入れられるかどうかがカギのような気がしています。「ムーミンは好きだけど、本はおもしろくなかった」という方、結構いらっしゃいますよね。

 

または、「本は読んだことがない」という方にも良く出会います。

 

それはきっと、ムーミン達のかわいらしさがキャラクターとして独り立ちしすぎているから。スヌーピーと同じですよね。スヌーピーは好きだけど、原作の【ピーナッツ】は読んだことない方もたくさんいます。

 

北欧ブームも手伝って、ムーミン一家は本当にたくさんの人に愛されていますもの。

 

北欧って聞いただけでなんだか素敵に聞こえるのは、私だけでしょうか(笑)。北欧好きと聞くと勝手に「オシャレな方」なんて思ってしまいます。けれども、北欧諸国って本当は明るい国ではないですよね。何しろ冬が長く雪が深いから、家にいる時間が多く、インテリア文化が発達したのだと言います。

 

そんな「おうち時間」が長いと、確かに考える時間が増えます。だから、ムーミンの物語は、こんなに深い物語なのでしょうか。

 

きっと今の私たちにはこの考える時間がとっても必要な気がしています。それも、コインの裏と表を裏返してばかりの行ったり来たりの考えばかりじゃなく、深く深く自分や自分の大切なものと向き合う考える時間が・・・・・・。

 

そんな時、是非【ムーミンパパ海へいく】を読んで欲しい。

これは、登場人物の一人一人が自分自身と深く向き合う物語です。

 

それぞれ、向き合うものが違うけれど、そのものの向こう側に自分自身がいます。自分自身と向き合うことは、実はとってもしんどいもの。


けれど、人生のどこかで自分自身と出会いなおさなければいけない。そんな気がしています。それは、この、世界がぐらぐらしている今この瞬間のような気がして仕方ありません。


実はどんな自己啓発本より、私たちを啓発してくれるのがムーミン達の物語。

ゴールデンウィークにまず一冊。ムーミンの物語を読破してみてはいかがでしょう?

    

皆さん、素敵な一日をお過ごし下さいね!