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暮らす文学

ただ、主人公の背中を追いかけて、一緒に泣いたり笑ったりするのに忙しく。

 

淡々と営む暮らしが、こんなにも人を強くするのか。ということがあの頃はわからなかった。

 

野イチゴのジャム

手作りのエプロン

たらいで洗うシーツ

ラベンダーの茂みに広げる洗濯もの

畑にまくミントとセージのハーブティー

 

森に棲む、その暮らしにあこがれ続けて、今に至ります。

 

けれども、今はこの物語の深さがわかる。

意思は習慣から生まれるということが。

 

毎日を、気持よく。

自分の周りを、心地よく。

時間と自分を整えて。

 

そんな毎日が強い自分を作ってくれること。

 

幼い頃は、まいと同じように「そんなことで魔女になれるの?」と思ったけれど、今ならわかる。

 

魔女修行は、淡々と日々を営むこと。

お日さまのちからと生きること。

お日さまが眠ったら、一緒に眠ること。

手を動かして生きること。

食べることをおろそかにしないこと。

 

この一冊は「暮らす」文学でありながら、魔女修行もできる一冊だったんだ。

 

一年に数回は読み返す、聖書のような本です。

 

2017年に出版された、

【西の魔女が死んだ 梨木香帆作品集】の中に、

冬の午後

かまどに小枝を

という話があるのですが、この二編がたまらなくいいので、まだお読みでない方は是非読んでみてくださいね。

 

皆さまも魔女な一日を!

 

西の魔女が死んだ

梨木香帆

新潮社出版